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リールフットの修理

リールの修理依頼がありました。Cap&Ring&Checkの納品を終えたタイミングだったので、即修理可能です。

メッセンジャーでの修理依頼内容はリールフットのロウ付けが外れたとのおことでした。

 

私自身ロウ付けの経験が無かったのですが、とりあえず内容確認するために送付していただきました。

写真のリールですが、次の3点に注目ください

1)リールフットとピラーとのロウ付けが外れている。

2)リールフット中央付近がロウ付けが外れた影響で変形している。

3)ピラーはネジ止めではない。

 

まず、このままでロウ付けできるか確認しましたが、その前に、リールフット自体が変形しており、たとえロウ付けできても極端に薄い肉厚と、変形により、フットが折れてしまうだろうと考えました。

リールフット自体の作り直しが必要ですが、ネジ止めではないこのピラーをどうやって取り外したらよいものか.....。

ネジ止めではなく、ピラーを固定する方法ならば、カシメだろうと見当が付きます。

また、カシメの頭部分を叩いた形跡があるため、カシメ、叩く、で検索すると叩きカシメとの文言がヒットしました。

とりあえずカシメの頭部分にドリル加工して穴を開け、徐々に穴サイズを大きくしていきました。

ピラー部分は切断して、ピラー部分を引っ張ってカシメを外そうと考えました。

φ2mmのドリル加工をした後に、ピラー部分を強引に引っ張ると叩きカシメが外れました。

叩きカシメはウォームギア状に加工されたカシメを叩き込むことによって、メス側(ここではピラー)に食い込んでカシメられているようです。

 

これさえ外れれくれれば、あとはリールフットとピラーを加工すれば修理できそうです。

 

このリールフットは長さが55mm程度と通常のリールフットと比べて長さが短く、フット裏面Rも若干小さいようです。

 

オーナーに確認すると、このリールフットに合わせてロッドも作製しているとのことで、リールフット形状、サイズは変更しないで欲しいとのことでした。

各部寸法を計測し図面に落とし込んでいきます。

純正リールフットの肉厚最薄部は0.05mmでした。

何か意図があっての肉厚なのかは知りませんが...。

図面が引ければ、後は加工するだけ、いつものように円筒状のパイプを作製して、リンゴ割りの要領で加工していきます。

 

リンゴ割りの加工方法は1パイプ当たり3個のリールフットを作製可能です。

加工効率は良いのですが、反面、今回のように1個だけのリールフットが必要な場合は材料がもったいないような気がしますが...

 

また、寸法計測でい一番気を遣うのがピラーのピッチです。

このピッチ計測が少しでも間違えていれば、フレームに取りつかない状態になりますので、カシメの中央部分と中央部分との距離を計測してみたり、ピラー間隔を計測して、ピラー径を差し引いてピッチを出したり、最終的にはフレーム側の穴に合う径の棒を加工して、その棒間隔を計測して、棒の径を差し引いた値をピッチとして作製しました。

 

 

加工、研磨を終え、リールのフレームに取り付けてみました。

固定は叩きカシメではなく、叩きカシメの頭形状に似た丸小ねじで固定しております。

 

当初想定した以上に大掛かりな加工になってしまいましたが、何とか修理出来ました。

 

本当はリールのカシメ頭にドリル加工する際には結構な神経を使います。

ピラーを切断した後で、叩きカシメを抜くことが出来なかったら?とか

フレームにキズを付けてしまったら?とか

でもトライしない限り修理は不可能なので、何とかトライしてみました。

 

当方に修理依頼された意味を感じながら..........。